私はギアス氏と名付けたウサギが、相棒の犬と一緒に旅をしているシリーズを描いています。
作品についての質問
展示をしていて、お客様によく尋ねられることがあります。
どうしてウサギを描いているの?
ウサギは自分?
相棒の犬の名前は何?
テーマはなんですか?
などなど。
今回はそれらの質問について書いてみようと思います。
どうしてウサギ?
まず、ウサギの耳のシルエットは絵にする上でとても魅力的です。
絵画の空間を「凸凹に切り取るパワー」があるからです。
だからどうしたと思われるかもしれませんが・・・このような抑揚のある形は、静けさを表す水平線を多用する私の作風に強いアクセントを加える、動きのあるベクトルとして作用しています。
また、耳は感情を視覚的に強く自在に表現することができます。
次に、幼少のころからピーターラビット、バックスバニーなどのイメージに囲まれ、親しみがあったこともウサギを選択した理由です。
私にとってそれはとても自然なことでした。
擬人化していることについては、人間を描く際に、人そのものを描くよりもワンクッションおいた(人を模した)動物の方が、広い意味での人間を描ける(人であれば顔が誰それに似ているなど意味が限定されてしまうことを避けることができる)からです。
多くの人になじみ深いウサギは表現上で前に出すぎることもありません。
これらのことからウサギは、鑑賞して下さる方を作品と繋ぎ、絵の中へ自然な感覚のままで誘導してくれる「案内役」になり得るのでは、と考えています。
ギアス氏は誰?
ギアス氏の半分は絵を鑑賞してくれている方です。
案内役に徹して欲しいとも思っています。
ギアス氏のもう半分は私自身なのかもしれません。
頭の中の懐かしい思い出、体験や空想、ギャグ、憧れ、笑いや怒り怖れの感情など、
そのままでは個人的過ぎて伝わりにくいものを一般化されるよう変換し、
絵画の中に落とし込んでいます。
ギアス氏の容貌について
可愛いさ溢れるウサギは沢山おり、無個性すぎるので、それをメインにして描きたくはありませんでした。
目つきは鋭めに! 年齢もある程度高めのウサギ、酒好きなイメージが自然と湧きました。 (若いころのギアス氏も描くことがあり、その作品では溌剌としています)
ウサギと一言にいっても野兎などは警戒心が強く、犬や猫に比べ野性味が抜けないとも言われる生き物ですから、鋭い目はありだと思うのです。
テーマは何ですか?
旅の体験や日々の暮らしの中からヒントを見つけ、考え、感情などを抽出する作業を行っているため、多くのソースがあります。
そのため、作品ごとに小さなテーマが存在しています。
この作品は絆を描きたかった
この作品は圧倒的な世界の大きさを描きたかった
自在に姿を変える不思議で奥深い存在をカメレオンに託して描いた
などなど。
ですから一言で「すべての作品に通じる大きなテーマ」は何か、
という問いに答えようとすると、どの言葉も完全ではないように感じ、
ギアス氏と相棒自身が、大きなテーマ自体を「旅を通じて探している」のです。
今までに「2人の航海」、「ニューヨークの旅」、「グランドキャニオンへの旅」、空想上の場所やモノたちとの出会いを描いた「空想博物誌」シリーズ等を発表、現在は「名画への旅」シリーズを制作しています。
鑑賞して下さる方がワクワクしたり、また逆に安らいでほっこりするようなものを作りたい。
そして作品の底の部分には、社会や個人の人生の様々な側面の描写とそれに対するメッセージを、直接的でなく間接的、比喩的に配するよう努めています。
また、新しい画題や技法へのチャレンジを忘れずにいたい。そのことは一つどころに留まらず新たな地平を目指す旅に似ており、「ギアス氏と相棒の犬の旅」の制作はそのまま私の理想の作家姿勢を形作っています。
私の考えが深まれば更新されていく言葉だと捉えて頂ければ嬉しいです。
相棒の犬の名前は?
相棒の犬の名前はジョンです。
ジョンですからオスです。
ギアスとジョンは絆で結ばれています。
ギアス氏がご主人なのかもしれませんが、
主人の抜けているところをしっかり補佐してくれる頼もしい相棒がジョン、といったイメージです。
ひとりの旅も味わい深いですが、体験を分かち合う仲間が居るとさらに印象に残る旅になるはずです。
ブログでは展示の告知などが主ですが、少しずつ作品についてなど、文章のジャンルを増やしていこうと思います。
最後まで読んで下さってありがとうございました。